Optimus を間近で見た男の結論は「人型じゃない」——倉庫ロボット Mytra が1.2億ドル調達
Image credit: Mytra Key Points 元 Tesla Optimus 責任者が「人型は産業タスクに最適でない」と断じ、倉庫専用ロボット Mytra を創業 シリーズ C で1.2億ドル調達、累計2…

Key Points
- 元 Tesla Optimus 責任者が「人型は産業タスクに最適でない」と断じ、倉庫専用ロボット Mytra を創業
- シリーズ C で1.2億ドル調達、累計2億ドル超。元 Tesla CFO が取締役に就任
- 大手食品流通 Albertsons が初の商用導入先、温度管理倉庫最大手 Lineage も戦略出資
2026年1月15日、カリフォルニア州ブリスベンの倉庫ロボット企業 Mytra が、 Avenir Growth 主導のシリーズ C で1億2,000万ドルを調達しました。 Kivu Ventures、 Liquid 2、 D. E. Shaw などが新規参加し、既存の Eclipse、 Greenoaks らも追加出資しています。累計調達額は2億ドルを超えました。
Optimus 責任者が人型ロボットを否定した
さて、この会社の何が面白いかというと、 CEO の Chris Walti 氏の来歴にあります。みなさんは Tesla が開発している人型ロボット Optimus (Tesla Bot)をご存知でしょうか。2022年の Tesla AI Day で試作機が公開され、イーロン・マスク氏が「自動車事業より重要になる」と語ったあのプロジェクトです。 Walti 氏はその Optimus の開発チームを率いたシニアマネージャーで、「AI Day で見たものはすべて、あのチームの努力の成果だ」と語っている人物です。
ところが同氏は同年 Tesla を辞め、人型とは正反対のロボットで起業しました。TechCrunchの取材でこう述べています。「人間の形は狼や熊から逃げるために進化したものであり、反復的な産業タスクには本質的に最適ではない」。さらに「人型ロボットは自動運転よりも数桁難しい問題で、まだ3回裏だ」と。
Optimus を誰より間近で見てきた人物が出した結論が「人型じゃない方がいい」だったわけです。倉庫の現場で必要なのは、パレットを正確に速く動かすこと。その一点に特化したのが Mytra のロボットになります。
3,000ポンドを3方向に動かす

ではそのロボットが何をするかというと、倉庫内でフルサイズのパレット(最大3,000ポンド、約1,360kg)を運びます。既存の自動倉庫で有名な AutoStore はグリッドの上面を2次元に動いて小型のビンを引き上げる仕組みですが、重いパレットは扱えません。Fortuneによると、投資家の Eclipse Capital はこうしたポイントソリューションがカバーできるのは倉庫全体のマテリアルフローの約10%にとどまるそうです。
Mytra はアプローチが違います。鉄製の立方体「セル」を最大80フィート(約24m)まで積み上げて通路を排除し、ロボットが特許取得済みのスクリュードライブ機構で構造内部を X・Y・Z の3方向に動きます。任意のセルから隣接セルへパレットを運搬できるので、通路がない分だけ保管密度が上がり、ソフトウェアで倉庫内の全空間をアドレス可能にします。 Walti 氏はこれを「マテリアルフローはクラウドコンピューティングのように動くべきだ」と表現しています。
初期導入では作業人員32%削減、保管密度34%向上を実現しました。大手食品流通の Albertsons が初の商用導入先で、複数の配送センターで本番稼働しています。
Tesla の「チーム」がそのまま来た
もうひとつ注目したいのが経営陣です。共同創業者で CTO の Ahmad Baitalmal 氏は Tesla で Model 3の生産ランプと上海・ベルリン・テキサスの工場立ち上げに関与し、その後 Rivian で工場システムを統括していた人物です。
そして2025年に入って動きが加速します。 Tesla で12年間ファイナンスのディレクターを務めた Gabi Gantus 氏を CFO に迎え、その半年後に元 Tesla CFO の Zach Kirkhorn 氏が取締役に就任しました。 Kirkhorn 氏といえば Tesla 初の通年黒字化(2020年)を監督した人物で、 Gantus 氏とは Tesla で10年以上一緒に働いた同僚です。要するに、 Tesla の製造と財務を支えたチームがそのまま Mytra に移ってきた格好になっています。
スタートアップの成長においてチームの「質」はよく語られますが、ここまで出自が明確なケースも珍しいのではないでしょうか。
450の倉庫ネットワークが控える
最後に、戦略的投資家の顔ぶれが気になります。世界最大の温度管理倉庫企業 Lineage は450以上の倉庫を運営しており、物流大手 Ryder System の VC 部門 RyderVentures も今回出資しています。どちらも自社の倉庫・物流インフラを Mytra の展開先にできる立場にあり、単なる財務投資ではなく顧客パイプラインとしての意味合いが大きいでしょう。
倉庫自動化市場は Grand View Research によると2030年に595億ドルへ成長が見込まれ、年平均成長率は18.7%。 Mytra は設立からわずか3年で約150人体制に拡大し、2025年にはThe Robot Reportの RBR50 Startup of the Year を受賞しています。 Optimus の開発を率いた人物が「人型じゃない方がいい」と確信し、 Tesla の財務・製造チームごと連れてきて作ったロボット。450以上の倉庫を持つ Lineage が出資者に名を連ねている時点で、次の展開はそう遠くないのかもしれません。