「LLM は表計算が苦手」を解く——Fundamental が2.55億ドル調達、ステルスからユニコーンに
ChatGPT に長い文章を要約させたり、コードを書かせたりすることは、もはや日常になりました。しかし、企業の基幹業務を支える「表計算データ」——数百万行の売上履歴、在庫データ、顧客の取引ログ——を AI に分析させよう…

ChatGPT に長い文章を要約させたり、コードを書かせたりすることは、もはや日常になりました。しかし、企業の基幹業務を支える「表計算データ」——数百万行の売上履歴、在庫データ、顧客の取引ログ——を AI に分析させようとすると、途端にうまくいかなくなります。
AI ラボの Fundamental は、この構造化データの課題に正面から取り組むスタートアップです。同社はステルスから姿を現し、シリーズ A ラウンドで2億2,500万ドル(シード3,000万ドルと合わせて累計2億5,500万ドル)の資金調達を完了したことを発表しました。
TechCrunch はポストマネー評価額を14億ドルと報じていますが、一方で12億ドルとする報道もあります。いずれにせよステルスからの登場と同時にユニコーン入りを果たした格好です。 Oak HC/FT、Valor Equity Partners、Battery Ventures、Salesforce Ventures がシリーズ A をリードし、Hetz Ventures が参加。エンジェル投資家には Perplexity CEO の Aravind Srinivas 氏、Brex 共同創業者の Henrique Dubugras 氏、Datadog CEO の Olivier Pomel 氏が名を連ねています。
ChatGPT のような LLM(大規模言語モデル)は、文章を書いたりコードを生成したりすることは得意です。しかし、企業活動の中核にあるデータ——売上表、在庫台帳、顧客リスト、取引ログといった Excel やデータベースに入っている「表形式のデータ」を相手にすると、途端に力を発揮できなくなります。

わかりやすく言えば、LLM は「本を読むのは得意だけど、巨大なスプレッドシートを読み解くのは苦手」な AI です。テキストは前から順に読めばいいのですが、テーブルデータは行と列が複雑に絡み合い、ある商品の売上が天気や曜日、競合の価格と同時に関係しているような構造を持っています。 LLM はコンテキストウィンドウ——一度に「見える」範囲——に収まるデータしか処理できないため、数百万行・数千列におよぶ企業データの全体像を把握することができません。
そのため、これまで企業が表データから予測や分析を行いたい場合は、データサイエンティストが「来月の需要予測」「顧客の離脱予測」「不正取引の検出」といったユースケースごとに個別のモデルを手作業で構築する必要がありました。どの変数が重要かを選び出す「特徴量エンジニアリング」と呼ばれる専門的な作業も欠かせません。
Fundamental のNexusは、この問題に対して「LTM(Large Tabular Model=大規模テーブルモデル)」という新しいカテゴリの AI で挑みます。 LLM が Transformer アーキテクチャで文章を読むように、Nexus は独自のアーキテクチャで表データを丸ごと読み込み、行と列の間に隠れた非線形な関係を自動的に見抜きます。生のテーブルデータをそのまま投入するだけで、特徴量エンジニアリングの手間なく動作するのが特徴です。しかも決定論的——同じ問いには常に同じ答えを返す——という、企業の意思決定に不可欠な再現性も備えています。 CEO の Jeremy Fraenkel 氏は TechCrunch に対し「ひとつのモデルで全ユースケースに対応できるため、データサイエンティストの軍団なしでも、個別に構築したモデルを上回る性能が出せる」と語っています。
2024年10月に設立され、DeepMind 出身メンバーを含むチームが開発した Nexus は、すでに Fortune 100企業との7桁ドル規模の複数契約を獲得しています。適用領域は需要予測、価格最適化、顧客チャーン予測、金融詐欺検出、病院再入院予測、エネルギー需要予測と多岐にわたります。 AWS との戦略的パートナーシップにより、AWS 顧客はダッシュボードから Nexus を直接購入・デプロイできるようになっています。
シリーズ A でユニコーン評価を獲得したこと、そして AI 業界の CEO クラスがエンジェルとして参加していることは、「LLM では解けない領域」に対する期待の大きさを物語っています。
via TechCrunch