Image Credit: Mizuho Financial Group

本稿は、みずほフィナンシャルグループ / みずほ銀行 執行役員 CBDO・Blue Lab 代表取締役 中馬和彦氏による寄稿。1月27日に名古屋で開催された TechGALA Japan 2026 での登壇をもとに手記を寄せていただいた。

2025年12月、私たちは Blue Lab の新体制についてお伝えしました。

2017年に立ち上がった Blue Lab を、みずほ銀行の100%子会社としてファンド運営会社に衣替えし、探索投資ファンド「Blue Lab Fund」を設立するというものです。ゼロイチの事業開発から、スタートアップとの連携によるオープンイノベーション型の産業創造へ。

私自身も代表取締役として、この新しい挑戦を率いることになりました。

1月27日、名古屋で開催された TechGALA のステージで、この構想の全体像を初めて披露しました。これから徐々に詳細をお伝えしていきますが、限られた時間では語りきれなかったことがたくさんあります。

なぜ今、銀行が産業創造なのか。どのような領域に注力し、どのように仲間を集めていくのか。ステージでは伝えきれなかった想いを、ここに記したいと思います。

失われた30年 〜世界の時価総額ランキング〜
Image Credit: Blue Lab CO., LTD.

生まれなかった30年

私がよく使うスライドがあります。日本とアメリカの時価総額ランキングを並べて、設立年数20年以内の会社をハイライトしたものです。

アメリカを見ると、Apple も含めるかどうかという議論はありますが、過半数が実はここ20年以内に出てきたスタートアップなのです。一方、日本を見るとどうでしょうか。トップの顔ぶれは全然変わっていません。

つまり、この30年は「失われた」のではありません。他の国ではインターネット革命を経て GAFA のような企業が次々と生まれたにもかかわらず、日本からは新しいインダストリーのスターが出なかった。「生まれなかった30年」だというのが、私が考える本質的な課題です。

産業界の大谷翔平のような存在は、まだ出ていません。これをちゃんと生み出していく。そこを目標に、これから私たちは動いていきます。

Image Credit: Mizuho Financial Group / 大村秀章知事と中馬和彦(みずほフィナンシャルグループ / みずほ銀行 執行役員 CBDO、Blue Lab 代表取締役)

Blue Lab、ファンド組織への進化

Blue Lab は2017年に立ち上がった組織です。当初はゼロイチの事業開発を中心に取り組み、さまざまなノウハウが蓄積されてきましたが、私が加わってからは、これをさらにアップデートしようと考えました。

もっと大きなスケールのことをやろうと思ったら、ゼロイチだけでなく1から10、10から100にも取り組まなければなりません。

今までの歴史を壊すのではなく、培ったノウハウを活かしながら、より大きなことに挑戦する。そこで Blue Lab をファンド組織へと進化させました。Blue Lab Fund は、みずほ全体として取り組む探索投資の器です。

タグラインは「強い日本の産業をつくろう、もう一度。」。

私はチーフ・ビジネス・デベロップメント・オフィサーとして新規事業の責任者を務めています。結果としてファンドも作って投資もしますが、私のメインタスクはあくまでも新規事業です。ただし、みずほとしての新規事業とは何か。それは一般にイメージされるような事業開発ではありません。産業を作る。これが今回、私がやることです。

Image Credit: Mizuho Financial Group

for 日本、for 世界の産業を作る

for みずほではなく、for 日本、for 世界のための新しい産業を作る。これが私たちの新規事業開発の考え方です。

一般的にCVCや新規事業部門は自社の戦略にアラインしたことをやるものですが、私たちはマーケットアプローチを取ります。前職時代に探索投資としてファンド投資してきた経験から、スタートアップへの投資を通じて、今世の中で何が起きているかを業界の内側から見てきました。

ロボットの業界、製薬・創薬の業界、すべてのものに対して色をつけずに投資をして、その会社の経営会議に出て中から見る。そうすることで、この業界はもっと面白いとか、こういうところで一緒になったらもっと伸びるということが理解できるのです。

私の頭の中には、世界中のシーズ・ニーズのマップがあります。星くずのようなものがたくさん、星空のように見えています。そこに、みずほから見える景色が加わりました。それを掛け合わせた時に、注力分野を決めました。

一つは日本の将来の輸出産業を作ること。やはり外貨を稼がなければなりません。どこかと言えば、IP エンターテインメントです。車の次は今エンタメ分野が輸出産業として第2位になってきました。アニメも絶好調です。ここをもっと伸ばしていきたい。

もう一つ挙げるとすれば、食の安全保障です。戦時下に食料を押さえられたら国としては終わりです。食糧自給率をきっちり上げていくことは、どうしてもやりたいテーマです。

このほかにも注力領域はありますが、いずれも共通しているのは、自ら潮流を作るのではなく、これから産業として立ち上がっていく領域をスタートアップと共に見極め、早いタイミングで参画していくということです。そしてそれを強化し、アクセレートしていく。社会的使命や技術的なキャズムを超えるタイミングを見定めながら、産業創造に取り組んでいきます。

Image Credit: Mizuho Financial Group

コンソーシアムで産業を興す

では、産業創出をどう実現するのか?

実は銀行には業法に基づく業務範囲や出資比率の制限があり、近年緩和が進んでいるとはいえ、事業会社のマジョリティを取ってオーナーシップを握るということにはやはりハードルがあります。

しかし、発想を転換してこれを活用することができます。残りのマジョリティを取ろうと思ったら、30%、40%の人を最低限集めてこなければなりません。つまり、特定一社ではなく、複数の大企業などのパートナーと一緒になって特定の産業を作るということです。

これはまさしくオープンイノベーションです。

具体的な例を挙げましょう。防衛の分野では、ドローン産業の国産化が喫緊の課題です。今のドローンは90%が他国製部品です。この部品のサプライチェーンを組み直さなければなりません。かつてパソコンの生産の多くがアジアに行ってしまったものを、もう一回こちらに戻してこなければならないのです。

これは一企業にできることではありません。担い手が国内に見当たらない部材などは、スタートアップというよりも、たとえば自動車産業のティア2、ティア3のような部品メーカーに作ってもらえるのではないか。

こういうところをバリューチェーンとして再結成して、もう一度ドローン村を作る。地方創生的なところも含めて、国が牽引しなければならない領域です。

そこで今、産業別のアライアンスを立ち上げようとしています。みずほを核にして、スタートアップ、デベロッパー、各種製造メーカーなど、多様なプレイヤーに参画してもらいます。その領域に挑戦したいスタートアップに対して、ノウハウや資金を提供するコンソーシアムです。

特に防衛のような領域では、技術だけでなく、さまざまな要件をクリアしなければなりません。そうした情報を提供しながら、一緒に産業を興していく。単純に技術を持ってくればいいだけではないのです。

私は 前職時代、ローソンを中心としたエコシステムのプロジェクトに関わりました。いろいろなスタートアップに出資して、M&A を重ね、最後はローソンの買収というセンターピンを打ち込むことで一つのドメインを完成させる。

しかしみずほでは同じやり方はできません。だからこそ、複数のパートナーと組むコンソーシアム方式が必要なのです。そしてこれは、金融が本来やるべき殖産興業、産業創造という原点に立ち返ることでもあると思っています。

Image Credit: Mizuho Financial Group

Day 0 からの伴走

私たちは Day 1、Day 0から伴走します。本当のユニコーンを作ろうと思ったら、シリーズ A 以前にしつらえなければなりません。そこまでにできていない会社は、どれだけ追加投資しても伸びない。だから最初が大事なのです。

強い日本の産業を、もう一度つくりましょう。私たちは資本とネットワークとあらゆるアセットをフルでご支援しながら、その結節点になります。次の30年で、日本から新しいインダストリーのスターを生み出すために。